-恋慕2-





「ん…ぅ‥」

関羽は夏侯惇を組み敷いていた。
強引にではなく合意の上の行為。
夏侯惇は関羽に抱かれることを選んだ。

「夏侯惇‥全てを忘れて鳴けばよい…」

関羽は追いつめるように腰を進める。
最奥まで突かれ身体が燃える様だった。
初めての行為に最初感じた苦痛も関羽の巧みな性技により今は溶ろけるような愉悦しかない
夏侯惇は頭が真っ白になればいいと願った。
曹操に抱かれることがないのなら誰であろうと同じだ。
苦しみから一時でも目を反らしたくて関羽を利用した。
関羽はそれでもいいと言って夏侯惇を慈しむように抱いた。
夏侯惇の右目から流れ落ちる涙は快楽からなのか曹操を思ってのモノなのか関羽にはわからなかった。

「何故拙者に抱かれた?」
「利用しただけだと言っただろう…」

夏侯惇は今更何を聞くのだと関羽を睨んだ。
快楽に散々涙したその目は赤く腫れぼったくて怖いどころか可愛らしかった。

「ただ利用するだけなら拙者じゃなくてもよかろう‥夏侯惇、貴殿を慕っておる者が他に もいることに気づいておるだろう?」

確かに夏侯惇は知っていた。
言葉で伝えられた事は無いが張遼や淵の絡み付くような視線をいつも感じていたのだ。
しかし思いに応えられないと夏侯惇自信嫌という程わかっていた、自分は孟徳しか見れな いのだと。
それなのに身体だけ差し出してどうしようと言うのだ…
自分に何の思いも持たない相手がこの場合最適なのだ。

「どうでもいいさ…一時でも孟徳を忘れる事ができるのなら…
誰が相手だろうと身体を預ける事に意味などないのだから…」

孟徳以外の相手ならば…そう心の中で続けた。

「少々面白くないが、貴殿の身体を好きにできるのは捨てがたいな」

関羽はくすくすと笑った。







「関羽、劉備の居場所がわかったぞ」

諸将が揃っている前で曹操は関羽に告げた。
急に呼び出され何かと思ったら曹操の口から喜ばしい言葉が飛び出した。
夏侯惇を抱いていたところを呼び出され関羽は少々不機嫌だったがそれも一気に吹き飛ん だ。

「誠でありますか?して兄者はいずこに?」
「劉表の所に世話になっておるらしい」

関羽は劉備が無事でいた事に安堵した。
一つ問題はあるものの関羽はすぐにでも劉備の元 に発ちたかった。

「曹操殿、元より兄者の消息が知れるまでのお約束。関雲長これにてお暇させていただき たい」

曹操は約束通り発たせてくれるだろうか、関羽はそれが心配だった。
自分一人ならどうに かなる、しかし劉備の妻子を置いて行くわけにはいかない。
曹操の許しなく劉備の元へ行くのは無理だった。

「関羽、やはり儂に仕える気はないか?」

曹操は苦笑しながら問うた。

「……一つだけ‥一つだけ可能性は有り申す」
「可能性とは何じゃ?」

曹操は関羽が手に入るかもしれないと瞳をキラリと光らせた。

「夏侯惇将軍を拙者に頂けるのなら考えましょうぞ」

夏侯惇は驚いた。
夏侯惇のみならずその場にいた全員が関羽の言葉に耳を疑った。

「ほぅ、夏侯惇をか?確かにお主は無双の猛将であるが、我が軍の夏侯惇とてかなりのものぞ?
部下として収まるとは思えんが?」

諸将らも夏侯惇を部下になどと見くびられたとばかりに関羽を睨んでいた。
曹操軍の先陣を担い軍の要とも言える夏侯惇を部下になどと言い出せば
こういう反応をさ れる事は火を見るより明らかだった。

「夏侯惇将軍は兵を率いてこそ光る将」

関羽はすかさず告げる。

「将軍を部下に欲しているわけではござらん。拙者は夏侯惇将軍の心を頂きたいと申して おりまする」

ざわめきが起こる。夏侯惇は足が震えていた。


何故関羽は孟徳にそんな事を言い出すのだ…


曹操の眉が一瞬だけピクリと動いた。
関羽はそれを目にするとそっと気づかれない様に溜息を漏らす。

「関羽よ、お主いつからそんなずる賢い男になった?」
「元より」
「…仕方がないお主は諦めるとしよう、あれは儂のモノだ。誰にもやれぬのでな」

夏侯惇の存在自体が自分のモノだと言う、曹操の為に生まれてきた人間だと。
曹操は喉の奥で笑った。

関羽を諦めてまで夏侯惇を離さない理由、それを夏侯惇はわかっていた。
愛ではない、唯一絶対の自分を裏切らない男。
生まれながらに覇王の曹操にはわかっているのだ、夏侯惇はその身体・命・魂まで自分の モノだと。
だから離さない。

「ならば仕方ありませぬな、夏侯惇将軍は諦めましょうぞ」

関羽はそう言って豪快に笑った。







「関羽っ」

夏侯惇が関羽の名を叫びながら馬を駆ってきた。
右手には愛刀の滅麒麟牙を握っている。
関羽は曹操軍から劉備の元へ帰る道のりわざと関 所破りをした。
朝方曹操は通行手形を部下に届けさせると言っていた、それを待てば関所はすんなり通れ たはず。
しかしその関所が夏侯惇の管轄だとわかった時に関羽は関所破りを決めた。

「関羽っ!叩き斬ってやる!」

夏侯惇が追いつき関羽に刀を斬りつけた、関羽は振り向きざま青龍刀でなんなくそれを受 ける。
鉄と鉄が弾け火花を散らした。
馬上で斬り合う二人。夏侯惇は本気で関羽を斬り殺す気だった。

「関羽っ何故関所を破った!」

憤怒に光る瞳で刀を振り上げながら関羽に向かい叫ぶ。

「何故俺の部下を斬った!」

夏侯惇は関羽の肩めがけ刀を力一杯振りおろした、
しかしそれが肩にあたるかあたらないかの所で関羽は青龍刀を翻し夏侯惇の刀を叩き落としてしまった。
ザンッという音と共に勢いよく滅麒麟牙は地面に突き刺さった
夏侯惇は舌打ちすると素早く下馬し刀に手を伸ばす。

「甘いっ」

そう叫びながら関羽が夏侯惇の腕を掴んだ。
あまりに強い力に夏侯惇は小さく悲鳴を上げる、まるで手首を握り潰されてしまいそうだった。

「夏侯惇、一人で追ってきたか。お前ならそうするだろうと思っていたが」

何もかもわかっていたと言う関羽の言葉に夏侯惇は目を見開く。

「くぅ…は‥離せ」

痛みから脂汗が浮かんでくるのがわかった、掴まれた手首がギチギチと音をたてているよ うだ。
夏侯惇はあまりの痛みに気が遠くなりそうだった。

「な…何故だ…関羽‥何故関所を‥破った…」

とうとう片膝を地に着いてしまった夏侯惇が苦しそうに吐き出す。

「何故…孟徳にあのよう‥な事を‥言った…」
「拙者は自分で思っていたより弱い男だった」

夏侯惇は意味がわからなかった。
夏侯惇自身自分の武力にはある程度自信を持っていた。
しかし今夏侯惇は関羽にあっさりと押さえ込まれてしまっている。
屋敷の裏で会った時もそうだった、体格の違いは簡単には覆せない。
なのに弱い男とはどういう事だ。

「お前を諦める理由がいるのだよ」

関羽は言った。

「お前はもう拙者を許しはしないだろう、それでよい。その不器用さが愛しいのだ。
お前が手に入るかもしれないと淡い期待を抱かずにすむように拙者を恨め」

関羽は悲しそうな笑みを湛えていた。

「関羽…なら‥孟徳に仕えれば…よかろう‥」
「拙者もまた不器用なのだよ」

一度主と決めた男を裏切るなど出来ない。
そう瞳が語っていた。

「夏侯惇…拙者は生涯お前を想うだろう…それだけは許されよ」

言って関羽は夏侯惇に最後の口づけをした。
舌を差し込み名残惜しいと咥内を味わい尽くす。

夏侯惇の息が上がってくったりとしたところに鳩尾に拳を入れた。

「ぐぅ…」

意識を手放した夏侯惇を関羽は自分の衣にくるみそっと地面に寝かせる。


もう少しすれば夏侯惇を追って誰かがくるはずだ。
夏侯惇がいないことに気づいた曹操が迎えをよこすことは目に見えていた。
曹操は夏侯惇を決して離さない。
離すくらいなら夏侯惇を殺すだろう。


関羽は夏侯惇の髪をそっと指で梳いた。

「元譲…愛しておるぞ…」

意識のない夏侯惇にそっと告げ関羽は劉備の元へと向かった。




目覚めた夏侯惇は瞳から涙を流していた。
しかし夏侯惇自信その涙のわけに気づかない。


関羽が呂蒙に討ち取られるその時まで…








どうにかギリギリ関惇になっていると思うんだけど・・・(妄想)

2004.09.19

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