度重なる天災や無理な重税に溜まっていた不満が爆発したのだ。
教祖の張角を筆頭にその数は三十万にも及んだ。
漢帝国を倒すべく立ち上がった農民出の信者たちは命を惜しまない。
何進を大将軍とし黄巾討伐連合が結成された。
「大兄ぃ、乱を起こしたとはいえ民を討伐するのはいい気分じゃねぇなぁ」
張飛が蛇矛を振り回しながら側で戦う劉備に言った。
「しょうがねぇよ、こいつら武器携えて殺戮してんだ、もう民とは言えやしねぇ」
足下に転がる味方の兵に目をやり劉備は眉をしかめる。
劉備は怒りに震えた。
「しかしこの乱ももうすぐ終わるであろう
関羽が青龍刀片手に黄巾党の信者をなぎ払った。
「曹操殿ねぇ…」
劉備がにやりと笑う。
「今のうちにちょっくら行ってその指揮官の顔でも拝んどくか！」
三人は顔を見合わせると好奇心まる出しの笑顔で頷く。
長い髪を結びもせず後ろに流しただけの男
「交戦中に戦列を乱してまで何の用だ！」
その武将は馬上から怒鳴った。
「幽州の大侠客が直々に話がしてぇと言ってんだ、さっさと親分を呼んできな！」
張飛が怒鳴り返すと武将は馬を進め張飛の側へと寄った。
「なんだぁ～？」
互いに顔をくっつきそうなくらいに近づけ睨み合っていた
かなりの者だ。
関羽は弟が無様にあしらわれたのも気にならない程その男に注目していた。
「この野郎―この張飛翼徳を何だと思ってやがる！」
張飛が跳ね起き自分を叩き落とした男にくってかかる。
「この夏侯惇！義勇兵ごときを問答無用に斬り捨てはせん！」
劉備が楽しそうに笑った。
「ならば、問答次第では斬り捨てられるのか？」
関羽は夏侯惇に問うた。
「何をしている！」
いきなり混ざった子供の声に四人はそちらを見た。
「荀彧殿」
夏侯惇がその子供に答える。
劉備はますます楽しそうだった。
この男、身分やなにかに胡座をかくような鼻持ちならない奴ではないらしい。
関羽の目線は夏侯惇に釘付けだった。
それに気づいた夏侯惇は不快気に眉をしかめると目線を剃らす。
「じゃあな、荀彧殿」
劉備が何やら荀彧との話を終えたらしい。
張飛は未だムカつくといった顔をして夏侯惇を睨んでいたが劉備に急かされ渋々馬首の向
きを変えた。
「では夏侯惇殿、また会おう」
関羽はそう言って意味ありげな微笑みを向け劉備に続いた。
劉備がニヤニヤといやらしい笑みを向けてきた。
「あなたの目は誤魔化せませんな」
「だけどあの手の男は主と決めた男以外にゃぁ靡かないぜ？」
益々鋭いことを言う劉備に関羽は笑うと目線を遠い地平線へと移した。
「簡単に手に入りそうにないからこそ落とす楽しみというものも増えるのですよ」
関羽は夏侯惇の顔を思いだし不適に笑った。
-出会い-
太平道が乱を起こした。
十人斬られても五人倒せればいいとばかりに捨て身で戦う信者たちは
漢帝国の軍人たちに
とっても異様なモノを見るような不気味さだった。
勿論漢皇帝劉氏の末裔を名乗る劉備たちも
義勇軍として参加した。
しかしその矛先は血でべったりと赤
く染まっている。
兵たちばかりではない、黄巾党は一般の町も襲っていた。
力を持つと人はこうも変われる
ものか…弱者だった事は忘れ更に弱者を虐げる。
新指揮官が曹操殿という方になってからは連
合軍の圧倒的な戦局となっておるからな」
本陣へ向かって駆けていくと一人の武将が気づき近づいてきた。
長身に精悍な体つき、
並の武将じゃないこと
は一目見てわかった。
どうやら曹操の直属の部下らしいと関羽は思った。
張飛はカチンときたらしくムッとした顔を隠しもせず答えた。
腕に覚えのある男たちでさえ震え上がる張飛の怒声にさえ臆した様子もなく
大きな瞳で真っ直ぐに
睨み返すその男に関羽は相当の実力を感じた。
張飛が口を開いた瞬間その男
の右拳が張飛の乗った馬にめり込む。
凄まじい打撃に張飛は馬ごと吹っ飛んだ。
「ありがたく思え」
関羽はそれを横目で見呆れると夏侯惇と名乗る武将の前に馬を進めた。
睨みつけてはいるものの本気で対しているわけじゃないのがその表情からわかった。
張飛は関羽の隣で怒りに顔を真っ赤にさせながら睨んでいる、が関羽はどこか楽しそう
だ。
馬上にはいっぱしに鎧に身を包んだ子供がいた。
どう見ても年端もいかぬ子供に敬称をつける夏侯惇。
関羽も目を白黒させその様子を見た。
楽しそうな顔で手をあげた。
「関さんよ～、あの夏侯惇て男気に入ったんだろ？惚れたね？」
関羽はその長兄の鋭さに苦笑する。
これが関羽が生涯を通し愛しぬいた男、夏侯惇との出会いの話である。
なんちゃって。
終
2004.10.05
蒼天航路5巻の中の桃園三兄弟と夏侯惇の初会話からウドン（関惇）妄想
蒼天だと張飛は益徳なんだけど惇兄を無双にしたかったから翼徳にしてみた～
しかし蒼天の惇兄はなんであんなに可愛いんだろう////
ﾌﾞﾗｳｻﾞﾊﾞｯｸﾌﾟﾘｰｽﾞ