いないわけではなく明かりも点さない一室、気配は有る。
戦から帰ってきたばかりの夏侯惇に話しかけるが返事は一向に返ってこない。
ただ微かに響く嗚咽。
区別無く誰とでも親しく付き合う夏侯惇には兵卒一人の死も辛く悲しいものだった。
戦の度に己の傷の手当もせず一人涙を流す従弟。
わかっていても手放すことなど出来なかった。
-涙-
「元譲・・・」
曹操の呼びかけに部屋の主の返事はない。
「元譲・・・いるのであろう・・?」
「また・・泣いておるのか・・」
言った途端に大きな体躯にしがみつかれ曹操はよろめく。
「部下の死が辛いか・・」
声を堪え震える背を優しく抱きとめる。
「わしを恨んでおるか元譲?
・・お前がこういう人間だとわかっていながら我が覇道に引きずり込んだ・・・」
曹操は暗闇をジッと見つめていた。
「今だけ・・今だけだ、明日には鬼に戻る・・・」
そう言って夏侯惇は曹操の体を抱きしめながらまた声を殺し涙を流した。
俺はお前の為に鬼になる・・・
終
2004.09.19
あまりの昔の絵の恥ずかしさに挿絵外しました・・・
ドリーム入り過ぎ!?
なんか添花の中の夏侯惇はこんな優しく悲しい部分を持っています。
自分の手が血に汚れても平気だけど部下の死には涙をながさずにはいられない。みたいな?
だけどそれも孟徳の為に耐えるのですよ!!(妄想)
ブラウザバックプリーズ