この小話は、裏部屋格納の「饗宴」のおまけになっています(笑)
単品でも読めますが、先にそちらをお読みする事をお勧めします…って、変態くさいエロなんだけど…いいかしら?(爆死)






-想い馳せ-





曹操は己の寝台で寝息をたてている夏侯惇の顔をずっと眺めていた。


ほんの少し前まで、その無邪気とも言えるコロコロ表情の変わる顔を微笑ましく眺めていたはずだったの に。
自分の油断が招いた事、そう歯噛みするが、夏侯惇の首筋に赤黒く色づく跡を見る度、 それを付けた本人を殺しに行きたいと逸る心を抑えるのに一苦労だった。

そう、ほんの少し前まで…



明後日の華雄との決戦を控え、身内だけの軍議をしていた。
自分の喋る内容に感心したよう に、目を輝かせていた夏侯惇を盗み見ながら、将らの陣形を説明する。
とうに自分の背丈を抜き、ガタイも逞 しくなった男を、変わらず愛らしいと感じる自分に苦笑してしまう。


いつも曹操の後ろをちょこまか と付いて来ては、遊んでくれとせがんでいた七つ年下の従弟。
女に会いに行く時さえ、遊んでくれなきゃイヤ だと言って、泣きついて離れず困ったものだった。
初めはギョロリとした大きな目が特徴的な痩せた子供だっ た。
少しでも苛めれば、すぐに大きな瞳に涙をいっぱいに溜め、歯を食いしばって震えている様な子供。
あまりにも付き纏うので鬱陶しいと感じていた時期もあった。いくら曹操が追っ払っても一向に離れようとし なかったのだ。


しかし、そこまで懐かれると、今度は守ってやらねばと思うようになった。
夏侯 惇が剣術を習いだし、めきめきと腕を上げていっても、自分が守ってやらねばと曹操は自負していた。
今思え ば、子分を守る親分的な気持ちだったのだろう。


その気持ちがハッキリと変わったのは今でもよく覚 えていた、夏侯惇が町で一目惚れをしたと言ってきた時だった。
曹操は、自分以外の者に夏侯惇が執着す るのが、どうしても許せなかった。
たいして美人でもなく、ましてや好みでもないその女を口説いて抱いた。
夏侯惇が傷つくのはわかっていた、嫌われるかもしれないとも思った。
しかし、その女の事を楽しげに 話す姿が曹操には許せなかった。
口をきいてくれないんじゃないかと内心ドキドキしていたが、夏侯惇は恨 み言一つ言わなかった。
ただ、孟徳兄はやっぱり凄いねっと言って笑った。
そして、曹操はそんな夏侯 惇を見て手放したくないと強く思ったのだった。


だが、そんな願いもあっさりと踏みにじられる。
夏侯惇が十四になった時だった。剣のお師を侮辱されたと言って、夏侯惇が兄弟子を切り殺してしまったの だ。
血塗れのまま目の前に現れた時は、夏侯惇が怪我をしていると思って血の気が下がった。
いく ら名門の夏侯家とはいえ、人を殺して知らぬ振りはできない。
まだ幼い夏侯惇が刑に処されるのはしのびない と、一族で逃がす事になったのだった。


明日の早朝、夏侯惇は下働きの男に連れられ沛国を出る…< br>次はいつ会えるかわからない。いや、もしかしたらもう二度と会えないかもしれない…
そう思った曹操は、 深夜夏侯惇の室へと忍び込んだ。

そして思いを告げ、抱いた。

初めての行為に顔を真っ赤にしつ つも、必死に自分にしがみ付いて痛みを堪えていた姿が脳裏に焼きつく。
確かに曹操の気持ちを夏侯惇は受け止 めた。
しかし、十四のまだ子供だった夏侯惇には泣き叫ばないでいるだけが精一杯で。
時間をかけてゆっく りと抱き、最後に射精してくれた時、曹操は嬉しさに泣きそうになった。
どんなにいい女を抱いても、これ程 感動したことな無いと言うほどに幸せな気持ちに包まれたのだった。



それから夏侯惇が出奔し、 長い年月を一度抱いただけの思い出を胸に過ごした。
反董卓連合軍を結成するにあたって、自分の補佐を任 せられるのは夏侯惇しかいないと、使えるツテは全
部使って、どこにいるかもわからない夏侯惇を探し出した 。
逞しく大きくなった体、しかし、変わらぬ眼差し。
曹操は、会うなり首を強引に引き寄せくちづけた。

「孟徳兄っ、馬鹿っ」

夏侯淵らの前でされた事に焦りまくる夏侯惇を、そのまま抱きしめ、曹操 は囁いた。

「もう、どこにもいかせん!お主はわしの傍らに…死 ぬまで離れる事許さんからな!」

その言葉に、夏侯惇は大きく頷いた。



その夜は、何がな んだかわからない状態で夏侯惇を抱いた。
曹操自身、初めての行為だとてここまで興奮しなかった。

相手が夏侯惇だからこそ。

まさにそれだったのだろう。
そして、ますます己の思いの強さを知った 。



もう手放さない。例え、嫌だと言っても逃がしてなどやらぬ。

そう心に誓い、自ら の副将として、連合軍でも離れず侍らせた。
それが、ちょっとした油断をしたばっかりに、他人の手垢を付け られるような愚行をしてしまった…
首筋から胸へと続く赤い印に、曹操は塗り潰すかの様に唇をつけ強く吸う 。

「…ん……」

チリっとした痛みに意識のない夏侯惇が身じろぐ。
全ての印を覆い隠しても、事実は消え ない。しかし、少しは気の済むような気がした。
もう二度と、他人になど触らせはしない。わしが傍にある限り。
何度となく誓いをたて、孫堅の褞袍を腹立たしく眺める。
褞袍の下へ手を潜り込ませ、夏侯惇の下腹部へと滑 らせていくと、一瞬おかしな感触に眉を顰めた。
確認するように何度もそこを撫でる。

「んっ…ゃ……」

無 意識に逃げる様に腰を引く夏侯惇を眺めながら、曹操は憎憎しげに吐き出す。

「あの…変態がぁっ!」








暫く連合軍の陣中が不穏な雰囲気に包まれていたのは言うまでも無い…








買Mャグ落ち!?

孫堅様が何 故変態かは、本編を読めばわかります。
えぇ、変態です(笑)














end





拍手にあげていた、堅惇おまけ話です。
小説か(元)拍手どちらにするか迷った挙句、こちらに載せ変えました。

2006.3.10(再録)