-想い-






殿は彼とどうしたかったのだろう…




今私が持て余してる気持ちと同じだったのだろうか…




今となっては聞くことはできないが
いつか…側に行く時が来たら酒でも飲みつつ聞いてみようか…







殿は最近機嫌がいい。
とても珍しいことだが、見た目には変わりなくとも私には解る。
いつものイライラしたものが薄れているような。




「右方向より敵軍勢っ、数は……約五千!か…夏侯惇軍ですっ!」

土煙をあげ進軍中の我が呂布軍に迫ってきた敵。

バタバタと風になびく『夏侯』の軍旗

「またですか…」

夏侯惇軍とはこうした接触を何度も繰り返していた。
曹操の軍略なのだろう、毎回我らをからかうようにつついてくる。
本気で戦うわけでもな く少しつついて逃げてゆく

いい加減イライラしてくるが敵将の夏侯惇はイライラしないのだろうか…

夏侯惇の噂は聞いている『曹操軍の武を担う隻眼の鬼将軍』そこまで言われる将軍が こんな戦を良しとしてやっているとは思えない。

忠義心のなせる技か…

私は武人に生まれたからには自分の武力を磨き限界を知りたいと願う。
だから呂布殿についた、おそらく最強の武人であろう呂布奉先に… ついて行けば自分も最強の武に辿り着けるのではないかと…




「呂布!かかってこい!」

先頭を駆け夏侯惇が叫ぶ
呂布は口元だけでニヤリと笑った。

あぁ…また楽しそうにしている…張遼はぼんやりと思った。

「いつも逃げ帰るなら出てくるな」

方天戟を振りかざし呂布が夏侯惇を挑発した、 夏候惇はふんっと鼻で笑うようなしぐさをし、そんな挑発もサラリと流した。
自分の務めに忠実に動く。

愛馬『飛焔』に跨った夏侯惇はまさに風のように馬と一体になって駆ける。

長く艶やかな黒髪をなびかせ、その隻眼の将は華麗に呂布軍の陣形を翻弄していた。
兵を率いるのが抜群にうまいというのもあるが、余程の信頼関係を築いているのだろう 号令をかけなくとも五千の兵は一つの生き物の様に完璧な動きを見せた。

滅麒麟牙の刃先を呂布に向けてかざし夏侯惇はニヤリと笑った。

『どうした?かかって来い』そう瞳で語っているようだった。

「ふっ…面白い男だ…」

呂布はそう言うと馬軍から外れようと手綱を引いた。

「なりませんぞ殿、夏侯惇は殿と一騎打ちする気など毛頭ありませぬっ!挑発に乗っては ダメです」

それに気付いた陳宮が慌てて叫ぶと呂布は小さく舌打ちし夏侯惇に背を向けた。




また不機嫌な顔に戻られた…

張遼には呂布が夏侯惇とひどく戦いたがってるように見えた。
戦が好きな人だ。いや戦だけしか興味が無いと言った方がいいだろう、しかし それを差し引いても呂布は夏候惇に興味を持っている様に見えた。




曹操との戦も暫くは進退を繰り返していたが、呂布軍はとうとう下ヒ城に追い詰められてしまった。

呂布の命運も尽きたというのだろうか。

最後に示した抵抗は、陳宮によっての『呂布奉先』という武将には似つかわしくない籠城という策だった。
しかし、相手の方が戦においての処方は数段上だった・・・
曹操により水攻めにあい城内は動揺し抗戦派と投降派に分裂してしまった。
投降派に陳宮を捕らえられ呂布は打つ手をなくし曹操軍に捕縛されたのだ。

縄をかけられ呂布以下配下の武将で生き残った者は曹操の前に引き出された。
張遼もその一人だった。

「呂布よ、お主が儂に降らんなら用はない。くびり殺そうぞ」

曹操はそう冷酷に言い放った。
呂布は、元より投降するなどという考えはまったくないとばかりに凶悪な笑みで答える。

「最後に何か申すことあらば申せ」

そう言われ呂布は以外にも夏侯惇と話をさせろと言った。

張遼は驚いた。
なぜ今、死を前にして夏侯惇に会いたいのだろうか
己の武にしか興味のない張遼にはその気持 ちが解らなかった。

曹操は怪訝そうな顔をしたが頷くと「夏候惇、来い」と後ろも見ずに叫んだ。

曹操の後ろに控えた諸将らの間を縫うように夏侯惇が顔を出す。

「どうした孟徳?」
「呂布が最後にお主と話がしたいそうじゃ」

夏侯惇は面食らっていたがすぐに呂布の前に歩いてきた。

「なんだ?」

「夏侯惇、お前との鬼ごっこは結構楽しかったぞ」

何を言っているんだこの人は?
こんな時に…ますます解らない。

張遼がびっくりして呂布と夏侯惇を凝視したままだった。

そしてその目に映る呂布は柔らかく、しかし不適に笑ったかと思うといきなり立ち上がり 夏侯惇に顔だけを近づけ唇を合わせた。

夏侯惇は何が起きたか解らずそのまま動けなかった。

一瞬曹操の眉が不快げに歪められたことに張遼は気付いた。
そして呂布は首に巻かれていた縄を両端から引かれ絞首刑となった…




壮絶なまでに最強だった呂布の最後だった。











死を間際にして何故貴方は夏侯将軍に会いたかったのか。







今私の胸を焦がすこの思いとそれは同じなのだろうか…










短っっ!初めての遼惇?呂惇?
うぅむ・・・書いた本人もどっちに分類すればいいのか 困った。
でも遼惇は増えそうだけど呂惇は微妙なので遼惇にUPしました。
添花は無双と蒼天航路しかわからないので戦のことなど史実と違うと思ってもスルーしてください(汗)
今、北方三国志読んで勉強中であります!
半端な感じの終わり方ですみません。
できればこの感じでいろいろ書いてみたいと思います。

2004.09.01


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